いつもTASTEをご覧のみなさんこんにちわ、もじゃです。
素晴らしいフィギュアを作られている原型師の方に突撃取材させていただきましたー。

ワンフェスで発表されたばかりのYOSHIさんの新作や今までに作ってきた作品について紹介しちゃおうと思います。

1975年6月4日 生まれ
ふたご座 
A型
岐阜県出身 横浜市在住
<好きなモノ>
久保田(千寿) 天吹(大吟醸) 百年の孤独 梅干サワー
<苦手なモノ>
ルールが守れない人

ホームページ とれぱんぐ

ではインタビューはじまり、はじまりです。


TASTE:初めてフィギュアを作られたのはいつ頃ですか?
YOSHI:大学卒業したくらいの頃ににカウボーイビバップというアニメを見て、作品の感じとか映像にとても感動したんです。
 それでCGを本格的に勉強したい!って思ってサンタモニカにあるCGを勉強できる学校に留学したんです。
 ある日友人に誘われてスカルピー(樹脂粘土)を使った造形をする授業に参加したんですが、そこで、ただ普通にやるだけじゃつまらないから、ちょっと日本人らしさを見せてみようかなって「浴衣の女の子」を作ったんです。
 先生はエイリアンやアメリカ版ゴジラなどを手がけている方だったので、周りの学生は普通にクリーチャーとかを作ってたんですけどね(笑)
 なぜかその作品が先生に気に入られて「日本アニメのアクションフィギュアを作っている知り合い(フィギュア会社のボス)がいるので紹介してやる」って。
 そんな感じで会わせてもらうことになったんですが、わざわざ時間を割いてくれるわけだし会う予定の日まで3日間あったので、当時アメリカで放送していた『天地無用』の魎呼(りょうこ)をスカルピーで作って持っていって、自分の名刺代わりにボスに見せたんです。
 そしたら「んー、・・・明日からうちに働きにきて」とその場で就職が決まりました(笑)
入社してから最初の仕事は、そのときの魎呼をリメイクしてアメリカで商品化することでした。
その他にはスペースチャンネル5のキャラなどを作ってましたねー。

TASTE:それだけ聞くと、原型を作るまでの道はとんとん拍子に進んでいるように思えるのですが?
YOSHI:そうですね、当時の周りの人達に導かれたというか、、、見えざる何か不思議な力が働いていたのかもしれません。

TASTE:その後日本でフィギュアを製作されるようになるわけですが、プロの原型師になるまでの経緯を教えてください。
YOSHI:しばらくそのフィギュア製作会社で働いていたのですが、実は会社の都合で就労ビザを貰えず日本に帰ることになってしまったんですね。

 日本に帰ってきてからは家庭教師のバイトをしながら実家で生活していたんですが、
ある日友人から「ガレージキットを買ったので色を塗ってくれないか」と頼まれたんです。

 それまでガレキに色を塗った経験はなかったのですが断れずに引き受けてしまったんですよね。
知らないなりに色々調べて色を塗って完成させたらすごく達成感があって「これ、面白いな」って。
 そういう事があってからガレキにはまったっていうのがあって、
依頼を受けてガレキの色塗りをするという仕事も家庭教師と二足のわらじで続けていました。


YOSHI:美少女フィギュアのガレキを展示販売するワンフェスの存在を知ったのもそのころで、どうせだったら力を試す意味でも出てみようかなって思ったんです。
 2002年冬、今からもう8年前になりますが、ワンフェスにて「吉井さん」というタイトルでオリジナルフィギュアを出展しました。
本格的に作る美少女フィギュアでは初作品で、試行錯誤しながら作った作品でしたねー。
その作品がレプリカント(注釈1)の方の目に留まりまして、雑誌のオリジナルフィギュア特集でご紹介していただきました。
 同時にコトブキヤの方からも声をかけていただきまして、その後にガレージキット原型製作のご依頼がありました。
「萌えキャラは作った経験がありませんし、あまり自信がありません」と一度は断ったのですが
「どうしてもお願いします」と頼まれて断れませんでした(笑)
そのとき作ったのが、こみっくパーティーの高瀬水着フィギュアの原型です

TASTE:そのフィギュアの完成品持ってますよ。PVCの女の子フィギュアが出始めた頃ですよね、
YOSHI:PVC完成品のはしりの頃ですね。まだ完成品の美少女フィギュアってあまり無かった時代ですね。

TASTE:よく覚えてます、このサイズでかわいい女の子フィギュアが販売されているというのが衝撃的でした。
YOSHI:タイミングもキャラクターも良かったのかラッキーなことにこの初めての作品が結構ヒットしまして・・・。
そのときのご縁が続いて、いろいろなフィギュアメーカーさんと今もお仕事をさせていただいています。

▲コトブキヤ 高瀬水着Ver.2 未だに第一線で飾っておりますー。


TASTE:YOSHIさんは今お仕事以外でハマッている事ってありますか?
YOSHI:今は唄うことにハマッています。ボイストレーニングにも通ってるんです。

TASTE:結構本格的ですね
YOSHI:3週間後にライブがあるんです! そして・・・その時に使うギターもこれから届くという・・・

TASTE:えええー!?(笑)
YOSHI:フィギュア原型製作しつつギター練習してがんばりますよ・・・フフフ


TASTE:最近は立体物を手軽に楽しめるというコンセプトでユーザーの新規開拓をしたものがブームの主流になって強いですね、
ピンキーとかfigmaとかねんどろいどとか
YOSHI:ユーザーの新規開拓という視点から見ると東方プロジェクトの作品もよく見られるようになりましたね。

TASTE:YOSHIさんはイベントで発表するキャラクターやアニメ作品はどうやって決めているんですか?
YOSHI:基本的に自分の気に入ったキャラクターを作ります。でもアニメを見てると「作ったら立体映えしそうだけど・・・
でも売れにくいから作られないだろうなあ〜」という視点で見てしまって、
職業病なのか素直に楽しめないことがありますね(笑)

TASTE:やっぱり採算がとれるかどうか、というのもフィギュア製作で重要な要素なんですね
YOSHI:そうなんですよ、それが一番大きくて。
 実は今回のワンフェスで作ろうと申請していた作品があったんですが、当日販売条件(販売個数や版権料)が厳しくて、現実的じゃないので諦めてしまいました、なんてこともありました。
 職業としてやる以上採算がとれないと厳しいものがありますからね。
 企業側にもいろいろ事情があることは分かるのですが、プロの作ったクオリティの高い作品がイベントで少なくなっていくというのは寂しいですね。
そのような面からも東方は作りやすい作品と言えますよね。僕も東方ではいくつかキャラクターを作っていますが、
かなり好きにやれるので作っていて楽しいです。
自由にファンが作品をアレンジして発表できるというのはとても有難いですね。


TASTE:YOSHIさんはフィギュアの製作にどれくらい時間をかけられてますか?
YOSHI:仕事として始めた頃の製作期間は1〜1.5ヶ月で一体作っていましたが、それからどんどんフィギュアの作りこみ量も増えてきたので今は一体に2〜3ヶ月くらいはかかってますね。
 最近のユーザーさんは目が肥えているのでこちらも真剣です。手を抜いたらすぐバレる(笑)
TASTE:でも、必ずしも作りこんだものが売れるとも限らないですよね?
YOSHI:今はインターネットの普及で話題になったものばかりが売れて、それ以外がまったく売れないという二極化しているのがちょっと心配です。
 作りこんだ造形的にクオリティの高いフィギュアが人気が出るのなら時間をかけても報われるのですが、そこらへんのバランス感覚は必要なんでしょうね。
TASTE:出来が良くても売れなかったりすると、冒険できなくなっちゃいますね。
ハルヒフィギュアの末期に発売されたフィギュアでも出来がものすごく良かったのがありましたが、セールス的にはいまいちだったように思います。


YOSHIさんのフィギュア製作方法

TASTE:YOSHIさんがフィギュアを完成させるまでの製作工程を教えてください。
YOSHI:今回のワンフェスで発表されたLilyに関してということになりますが、おおざっぱな流れで説明しますと・・・

@メーカーさんから依頼がくる
Aスケジュールに問題なければ依頼を受ける
Bイラストレーターさんにラフイラストを描いていただく
Cポーズをイラストレーターさん、メーカーの担当者さんと相談しながら決める
D決定したポーズ案を元に原型製作に入る
E針金で人の形を作成し、体のパーツ毎にパテ(エポキシパテ)を盛って人の体らしくする
F棒人間をイラストと照らし合わせながらポーズをつけ、間接部分にパテを盛って固定する
G肉付けをして、体と顔を作ります、ここで裸のフィギュアができあがる
H服を作る
I原型を作ったらメーカーさんにお渡しして完成

こんな感じです。本当にすごくおおざっぱですけど。

TASTE:へぇ〜。結構段階を踏んで作るんですね〜。
YOSHI:そうですね。完成までにはいろいろな工程があるんですよね。


TASTE:YOSHIさんが「これはこだわって作っている」っていうポイントってありますか?
YOSHI:自分なりのこだわりはやっぱりありますね。ポーズを決める時はものすごく時間をかけますね。
美しく見える構図を計算してポーズを考えたり、時には一ヶ月くらいポーズ考えてる時もあります。
 フィギュアの見栄えは80%以上がポーズに掛かっていると自分では思ってますので。

 それとこだわりってほどのものでもないんですが、フィギュア原型を作る時はパテ(WAVE軽量エポパテ)一種類のみで製作しています。
一つの素材で作ると完成したときの見た目がキレイなんです(笑)
これは各原型師さんによって好みがすごく分かれるところなのでどれが正解っていうのもないんですけど、
僕は作ってる時の見た目って気にしちゃうんですよね。


製作環境について

TASTE:作業はどちらで行われてますか?
YOSHI:自宅の一室を作業場として使っています。夏場が過酷ですね。
エポパテって固まるのを早めるために温めるんですが、夏場でもパテの硬化促進のために部屋の中で電気ストーブを使っているんです。もちろん体を冷やすためにエアコンも使ってますので部屋の中の温度差が凄いことに(笑)
TASTE:北風と太陽のような壮絶な環境ですねー
YOSHI:健康にも悪そうですし、電気代も大変ですよね。何か他にいい方法があったらいいんですが。


TASTE:作業中は音楽など聴かれてますか?
YOSHI:そうですね、ゲームセンターCXを流しなら作業をすることもありますが・・・

TASTE:ああ、私もフィギュアのレビュー作業中はゲームセンターCX聞いてます
YOSHI:でも、一番集中できる環境は無音ですね。納期が近い修羅場のときはもちろん無音です。
音楽とかを聞いてしまうことで時間の区切りを無意識のうちにつけてしまうので、それを防ぐ目的があります。
これは長年一人で作業を黙々としていて気付いた僕なりの知恵なんですけど(笑)
 ただし一日の上限は決めてて、8時間以上やらないようにしてます、次の日に疲れを持ち込まず、
毎日コンスタントに作業ができるように気を使ってますね。
 スケジュールは計画的にしています。しているつもりなんですが…なぜかたびたび遅れてしまっています(笑)


TASTE:やはり納得いくまで時間をかけられますか
YOSHI:そうですね。性格的に自分が納得しないと進められなくて。
ただもらった資料で淡々と進めるのではなくて、自分なりにキャラの設定を噛み砕いて、自分が「これが一番かわいい」と思う造形をするようにしています。
キャラクターの外見を作るんじゃなくて内面を作りたいといいますか・・・。

 自分の作品で言うとFateの女子高生セイバーなんかは「僕の考えた一番かわいいセイバー」を妄想を膨らませて作りました(笑)
シチュエーションやポーズや表情や服装をかなり練り上げてその時の「かわいい」をめいっぱい表現しましたから(遠い目)

 以前とあるモデラーさんが言われてた「きれいに作るのは技術で、かわいく作るのはセンスだ」というのが心に残っています。

 プロであるなら技術もセンスも備わっているのが理想ですが、今の自分にはその両方がまだまだ不足しています・・・。
なんとか自分の持っているもの全て搾り出して可愛く作りたいですね。


▲誌上通販された制服セイバー。とても可愛らしいセイバーです。


TASTE:フィギュア業界について一言ありましたらお願いします。
YOSHI:とても個人的な意見ですが、フィギュアは「完成品」でなくてもいいんじゃないか、と思っています。
ガレキにも良さがあることをいろんな人に知って欲しいなあって
 買ってきたフィギュアを箱から出して飾るだけじゃなくて、ガレキを買って、組み立てて、色を塗るのもフィギュアの楽しみ方の一つだと思うんです。
 以前の僕がそうだったから余計に思うんですが、ガレキって完成させるまでがすごく楽しいし売っている完成品にはない感動があるんですよね。
ガレキを完成させる楽しさももっと広く伝わるといいなと思っています。

それにガレキを作っていると原型製作者の作品に対する想いが分かってまた違う視点からフィギュアを味わえるようになると思いますし。


TASTE:ある意味自分だけのフィギュアになるから愛着も沸きますね
YOSHI:その達成感とかも味わって欲しいなあと思いますね、フィギュア好きな方々がそこまで踏み込んでいただけると
原型を作っている側としてはやりがいがありますね。


TASTE:ガレキの製作となると専門的なイメージがあってユーザーのみなさんが引いてしまっているのではないかと思うのですが・・・
YOSHI:最初のとっかかりで製作に二の足を踏んでしまうと思いますが、是非チャレンジして「自分だけのフィギュア」を作ってほしいですね。

 「ガレキ製作ってどんなことやるの?」っていう人はニコニコ動画で「ガレキ製作講座」を公開していますので是非ご覧ください。
できるだけ初心者の方にも分かりやすいようにと心がけて作りました。まだ完結はしてないのですが…(注釈2)



TASTE:今後のご予定を教えてください。
YOSHI:実は以前から好きだった作品をメーカーさんに提案してみたところ幸運にも作らせていただくことになりました。
ワンフェス終わったらそれに全力で取りかかります。

 冬のワンフェスの頃には情報が出ると思います。
今までの自分にない新しい方向性でチャレンジしますので、ぜひご期待下さい!

TASTE:それでは最後に新作について一言お願いします。
YOSHI:ファットカンパニーさんから発売されるLily from anim.o.v.eの原型を担当させていただきました。
初音ミク以来のKeiさんとのコラボです!
ボーカロイドもフィギュアも是非ご注目下さい!

TASTE:本日のインタビューはとれぱんぐのYOSHIさんでした、どうもありがとうございました。
YOSHI:ありがとうございました。

▲WF2010夏にて発表されましたファットカンパニー Lily from anim.o.v.eです。
躍動感のあるポージングが魅力であります。


【注釈その1】
美少女フィギュア情報雑誌「レプリカント」
YOSHIさん制作の橙が表紙に採用されたのは2008年11月発売Vol34号です。
橙のキュートなしぐさに目を留めた方も多いはず。
公式サイトはこちらから

【注釈その2】
ニコニコ動画にアップされている
ガレキ制作講座「橙(ちぇん)を作るよ !」シリーズはこちらから
ガレキ制作に必要な道具の解説やナイフなどの基本的な使い方などなど
「初めてガレージキットを作りたいと思った人」に向けた丁寧な説明の講座です
「丁寧でわかりやすい」とコメントも多くとても好評。
講座自体はまだ完成していませんが、ご本人は最後まで続けるつもりの模様・・・?



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